このところ原田ひ香。
昨夜は『彼女の家計簿』(光文社文庫)

旬1

昭和21年の家計簿。
国語の授業の場面、
自分ならどうしたのだろう?

  6月21日
  今日も、国語の時間に、
  戦死した父親のことを書いた作文を読んだ子がおり、
  そのまま父親の思い出を語っているところを、
  学年主任の佐々木先生が通りかかられた。
  先生はいきなり教室に入って来て、
  「時勢にあわないことをしてはいけない」と言った。
  突然のことに皆、
  平手打ちされたような気持ち。

  肉親を失ったことを悲しんで、
  どこが悪いのか。

  6月27日
    僕なら、
    こうして悲しみ泣けるようにお父さんたちは戦ったのだ、
    と答えますね。
    戦争中は悲しむことさえできなかったのだから、
  と言われた。
  なるほど、さすがに木藤先生らしいお答え、と感心した。

  けれど、
  今、思い返すと、
  どこか納得いかない。

  7月18日
  あれからずっと考えておりましたが、
  悲しむために死んだなんて、
  私は生徒に言えません。
  何も悪くない彼らが、
  なぜそんな理由で父親を亡くさなければならないのでしょう。
  私たちの何が悪かったのでしょうか。

もし戦中に教壇に立っていたら、
もし戦後まもなく生徒の前に立っていたら、
どんな自分であったのだろう?
体がキュッとする。
心がギザギザする。