【抒情的家庭薬局】2022・2・13
2022年02月13日
「図書」(岩波書店)の3月号に紹介された本を買いました。
エーリヒ・ケストナー『人生処方詩集』(岩波文庫)
病気や怪我の薬が家庭に備えてあるように、
さびしさとか、
失望とか、
そういう心のなやみをやわらげるには、
ほかの薬剤が必要である。(「序文」より)
それをケストナーは「抒情的家庭薬局」と名付けています。
そういう目的で書かれた詩集ということらしい。
昨夜、
半分ほど読みました。
その中で心に残った「薬」を紹介します。
使用法「人生をながめたら」にある「薬」の一つに、
「列車の譬喩(ひゆ)」がありました。
ぼくらはみな おなじ列車にこしかけ
時代をよこぎり 旅をしている
(中略)
そのとき汽笛が かんだかな唸(うな)り声(ごえ)をあげる
列車は徐行して とまる
死人が いくたりか おりる
子供がひとりおりる 母親が叫ぶ
死人は 無言で
過去のプラットホームに立っている
列車は駈(か)けつづける
時代をよこぎり
ひた走りに走る
なぜだか だれも知らない
(後略)
具体的な処方になったかどうかわかりませんが、
心に残る詩でした。
この詩も印象的でした。
倫理
実行しなければ
差はない
どことなく漢方薬のような「薬」が多い。