「図書」(岩波書店)の3月号に紹介された本を買いました。
エーリヒ・ケストナー『人生処方詩集』(岩波文庫)

旬1

病気や怪我の薬が家庭に備えてあるように、
  さびしさとか、
  失望とか、
  そういう心のなやみをやわらげるには、
  ほかの薬剤が必要である。(「序文」より)

それをケストナーは「抒情的家庭薬局」と名付けています。
そういう目的で書かれた詩集ということらしい。

昨夜、
半分ほど読みました。

その中で心に残った「薬」を紹介します。

使用法「人生をながめたら」にある「薬」の一つに、
「列車の譬喩(ひゆ)」がありました。
  ぼくらはみな おなじ列車にこしかけ
  時代をよこぎり 旅をしている
     (中略)
  そのとき汽笛が かんだかな唸(うな)り声(ごえ)をあげる
  列車は徐行して とまる
  死人が いくたりか おりる

  子供がひとりおりる 母親が叫ぶ
  死人は 無言で
  過去のプラットホームに立っている
  列車は駈(か)けつづける
  時代をよこぎり
  ひた走りに走る
  なぜだか だれも知らない
    (後略)

具体的な処方になったかどうかわかりませんが、
心に残る詩でした。

この詩も印象的でした。
    倫理
  実行しなければ
  差はない

どことなく漢方薬のような「薬」が多い。