【おたより】2022・2・23
2022年02月23日
先日、
葬儀に行った妻が、
会葬者に渡された「ごあいさつ」をいただいて帰りました。
私がいただいたものではないので、
ところどころ省略して引用します。
几帳面で、頑張り屋の夫でした。(中略)
ゼオライトや色素増減太陽電池の研究と開発に取り組み、
実直に働いていました。(中略)
別れは悲しいのですが、
何事も最後まで貫いた夫をたたえ、
あふれる感謝を伝えて見送ります。(後略)
全文を通して、
伴侶への思いあふれる「ごあいつ」でした。
稀に見るすてきなおたよりを読みました。
もう一通は、
こんなポストカード。
私がいただいたものですが、
私信ですので、
大半を省いて引用します。
(前略)2月になりました。
寒い中でも下萌ゆる気配、
「春は名のみの♪♬」と、
自然、口ずさみ、
ふきのとうを見つけ、
心躍る気持ちです。(後略)
最近、
こういう情緒のあるおたよりは久しぶりです。
「下萌ゆる」
この時期にしか使えない素敵なことばです。
『カラー図説 日本大歳時記』(講談社)から、
「下萌(したもえ)」
草の芽の土に萌え出ることである。
街の音とぎれる間あり草萌ゆる 中村汀女
下萌ゆと思ひそめたる一日かな 松本たかし
「一日」、おそらく「ひとひ」だと思います。
下萌えぬ人間それに従ひぬ 星野立子
星野立子の父である高浜虚子が、
この句に与えた評の一節。
天地の運行に従つて百草は下萌をし、
生ひ立ち、花をつけ、実を結び枯れる。
人も亦、
天地の運行に従つて生れ生長し老い死する。
このふたつ、
二月に入っていただいた、
最も心にしみるおたよりでした。