先日、
葬儀に行った妻が、
会葬者に渡された「ごあいさつ」をいただいて帰りました。

私がいただいたものではないので、
ところどころ省略して引用します。
  几帳面で、頑張り屋の夫でした。(中略)
  ゼオライトや色素増減太陽電池の研究と開発に取り組み、
  実直に働いていました。(中略)
  別れは悲しいのですが、
  何事も最後まで貫いた夫をたたえ、
  あふれる感謝を伝えて見送ります。(後略)

全文を通して、
伴侶への思いあふれる「ごあいつ」でした。
稀に見るすてきなおたよりを読みました。

もう一通は、
こんなポストカード。
旬1
私がいただいたものですが、
私信ですので、
大半を省いて引用します。
  (前略)2月になりました。
  寒い中でも下萌ゆる気配、
  「春は名のみの♪♬」と、
  自然、口ずさみ、
  ふきのとうを見つけ、
  心躍る気持ちです。(後略) 

最近、
こういう情緒のあるおたよりは久しぶりです。

「下萌ゆる」
この時期にしか使えない素敵なことばです。

『カラー図説 日本大歳時記』(講談社)から、
「下萌(したもえ)」
  草の芽の土に萌え出ることである。
    街の音とぎれる間あり草萌ゆる  中村汀女
    下萌ゆと思ひそめたる一日かな  松本たかし
「一日」、おそらく「ひとひ」だと思います。

    下萌えぬ人間それに従ひぬ  星野立子
星野立子の父である高浜虚子が、
この句に与えた評の一節。
  天地の運行に従つて百草は下萌をし、
  生ひ立ち、花をつけ、実を結び枯れる。
  人も亦、
  天地の運行に従つて生れ生長し老い死する。

このふたつ、
二月に入っていただいた、
最も心にしみるおたよりでした。