今、読んでいる本の中に、
こんな場面がありました。
二人の母親が、
ともに国外にいる息子の話をしています。

一方の母親が、
「便りのないのは元気の証拠」というべきところを、
言い間違えて、
「元気のないのは便りの証拠」と言ってしまいます。
他方の母親が、
「何の便りの証拠?」と茶化します。


夜更けてふと、
この会話を思い出し、
「元気のないのは便りの証拠」という言い方、
言い得て妙だなと思いました。

誰かが元気がないのは、
口には出さないけれど、
文字には書かないけれど、
今この人に起こっている何かの証拠なのです。
声なき声の便りの証拠なのです。

そう思うと、
この言い間違いは、
案外、奥が深いなあと思った次第です。

ちなみに、
読んでいる小説は、
中島京子の最新刊『ムーンライト・イン』(KADOKAWA)