娘が中学生のころの教科書、
「中学国語 伝え合う言葉」(教育出版)に、
長野まゆみ「卵」が載っています。

岬の中学校に、
島から通う生徒がいます。
祖父が操舵(そうだ)する船なので、
海が荒れると学校を休みます。

学校の飼育器で買っているチャボの卵が、
明日にも孵(かえ)りそうですが、
あいにく明日は強風の予報。

「紺野先生」は、
生徒に孵化(ふか)の様子を見せたくて、
下宿に少年を泊めてもいいと提案します。

 彼の祖父は、
 孵化の場面に立ち会うのと同じくらい、
 のぞみがかなわないことをしんぼうする気持ちも大事だと諭した。
 夕やみの中、
 群青(ぐんじょう)の水尾(みお)をひいて、
 船は島へ向かった。

まっとうな大人が、
まっとうな言葉を口にしたのを、
久しぶりに聞いて、
いたく感動しました。

2年生になったばかりの中学生は、
この言葉に触れて何を思ったのだろう。

思春期の入口は、
この教科書から何を学んだのだろう。