藤岡陽子「海路」は、
人の“死にざま”が大きなテーマです。
  自分はいつ、どのようにして死ぬのだろう?
  いつもそんなことを考えているわけではないが、
  時々は、ふとそんなことを思ったりする。
  きっと、病院で、
  知らない誰かに介護されて、
  最期は諦めたように死んでいくんだろうな。
  人は生きながら死のことを考える不思議な生き物だ。
  生をないがしろにするような日々を送っている時でさえ、
  死については真剣に考えたりする。

世の中には、
死そのものより、
死にざまの方が気にかかる人もあるのだ。

  自分が自分でなくなることが怖いんです、志木さん。
  誰からも相手にされない、
  ただの衰えた独りきりの老人になることが。

世の中には、
生そのものより、
生きざまの方が気にかかる人もあるのだ。

 

昔、
介護施設に就職した卒業生が、
夏休み、学校にやってきて、
  せんせい、ぼけたらおいでよ。
  こころこめてせわしてあげるから。

と言ったことを、
なんだかとってもあったかいことのように思い出しました。