昨日の一日一冊は、
一昨日に続き雫井脩介。

『つばさものがたり』(角川文庫)

旬1

彼には珍しく洋菓子店の話。
若きパティシエールの物語。

雫井脩介の小説は、
何かしらの残酷が心をえぐる。

 

『つばさものがたり』にも、
ある種の残酷が用意されていました。

でもそれは命の残酷だったので、
平常心では抗しきれなかった。

残酷ではない個所から少し引用します。
  「小麦はそういう子だよ・・・そういう子なのよ」
  娘を誇るように彼女はつぶやいた。
       (中略)
  私は小麦さんに出会っていなかったら、
  自分に何ができて、
  何ができないのかも分かんないまま年を取っていくとこだった。
  そんな何にもない生活に満足して、
  それが幸せな人生だって思いこんでるとこだった。
  私、自分がこんなことまでできる人間だって思ってなかったの。
  こんなに一生懸命仕事をして、
  まだできる、
  まだうまくなれるなんていうふうにがんばれる人間だって初めて知ったの。

少し前の藤岡陽子がそうであったように、
雫井脩介もしばらくは読めそうにない。