『水の歳時記365日』の続き。
10月から3月までの半年で、
いいなあと思った句。
  10/ 1 美しき雨ふりいでし雨月かな  倉田紘太
陰暦八月十五夜の月を「名月」、
雲に覆われて見えないときは「無月(むげつ)」、
雨に降られたときは「雨月(うげつ)」というそうです。

  10/ 8 一粒の葡萄のなかに地中海  坂本宮尾

  12/26 一夜(ひとよ)さは雨あたたかに年の暮  鈴木しげを

  12/31 年の湯の湯気に消えゆく月日かな  吉屋信子

   2/ 5 下萌ゆる力となりて降る雨よ  稲畑汀子

   3/ 4 これよりは恋や事業や水温む  高浜虚子
     大正五年、
     東京商業学校(現・一橋大学)の卒業生へ向けて送った句です。
     希望に満ちて旅立つ青年たちへ、
     これからは恋や仕事など、
     わくわくするような楽しみがたくさん待っていると、
     その明るい未来を祝福します。

  3/22 あがるまで見てゐたき雨 卒業す  下坂速穂 

  3/30 花は水にふれたく 水はゆくりなく  夏井いつき

流れに触れたくて散るように見える花も、
水からしてみると思いがけないできごと、
ということらしい。

考えてみたら、
世の中のたいていのできごとは、
こういうことなんだろうなと思います。