今月号の「波」(新潮社)をめくって、
三枝昂之「掌のうた」に、
谷崎潤一郎の歌を見つけました。
  老いぬれば事ぞともなき秋晴れの日の暮れゆくもをしまれにけり

三枝さんの解釈。
  なんということもない秋空が暮れてゆくのも、
  何故か惜しむ気持ちになってしまうのです。

  老いたこの身には。

私の老境を代弁してもらった気がしました。

ところで谷崎は、
「短歌小便論」を唱えて、
  元来歌は巧拙よりも、
  即吟即興が面白いので、
  小便をたれるように歌をよんだらいい(後略)

  尿意を催したように、
  ふと動いた心を、
  短歌形式に導かれて素直に詠って(後略)

と言っていたそうです。