昨日から読み始めた単行本、
末盛千枝子『根っこと翼~皇后美智子さまという存在』(新潮社)
旬1

  そういえば、
  天皇陛下が心臓の手術をなさったあと、
  平成二十六年のご自分のお誕生日に際して、
  皇后さまは、
  その年の忘れられないこととして、
    御手術後の陛下と、
    朝、葉山の町を歩いておりました時、
    うしろから来て気付かれたのでしょう、
    お勤めに出る途中らしい男性が、
    少し先で車を止めて、
    道を横切って来られ、
    「陛下よろしかったですね」
    と明るく云い、
    また車に走っていかれました。
    しみじみとした幸せを味わいました。
  と言っておられる。(19ページ)

  私は今でも、
  昭和三十四年のご成婚の日のお馬車の列で、
  沿道の人々から受けた温かい祝福を、
  感謝とともに思い返すことがよくあります。
      (中略)
  私の新しい旅立ちを祝福して見送ってくださった、
  大勢の方々の期待を無にし、
  私もそこに生を得た庶民の歴史に傷を残してはならないという思いもまた、
  その後の歳月、
  私の中に、
  常にあったと思います。(28ページ)

こういう感覚の方だったのだなあと思いました。
庶民の歴史、
庶民の生活を、
そこに暮らす庶民の感覚を、
大事になさった方だったのだなあと思いました。

そして、
庶民としての営みのなかに、
しみじみとした幸せを感じることが、
おできになる方だったのだなあと思いました。