二年かかりました。
大城立裕『焼け跡の高校教師』(集英社文庫)

旬1

大城さんが亡くなったときに買った文庫本でした。
いつも手の届くところに置いておきながら、
なかなか読み終えることができませんでした。

同じような描写が二回出てきます。
  一年後、
  彼らの卒業式での、
  とくに謝恩会での興奮ぶりは忘れがたい。
  ほとんどの卒業生が我を忘れた様子で、
  多くが教師の胸に顔を埋(うず)めて、
  それこそ泣きわめいていた。
  戦争で山を逃げまわっていた日々を思うと、
  それから生き延び、
  解放されただけでなく、
  あらためて学校に出してもらっての有難さ・・・
  それを思えば、
  教室さえ自分たちの手で造ったのだということが、
  ひとしおの誇りと喜びを覚えたはずで、
  その感慨ゆえに違いなかった。(31・32ページ)

  儀式のあと、
  午後に謝恩会があって、
  そこで男といわず女といわず、
  好きなだけ恥じらいもなく、
  教師の胸に顔を埋めて泣きわめくのが、
  なんの不思議もなかった。
      (中略)
  家庭では親が惜しみなくご馳走をつくって、
  息子、娘の卒業を祝う準備をして待ち構えているのであった。
  戦争というよりも戦場をくぐって、
  生き延びてハイスクールまで出したことを誇りに思い、
  その卒業を祝うのになんの物惜しみもないことが、
  不思議ではなかった。(107ページ)

県民の四人に一人が犠牲になった沖縄戦を思うと、
さもありなんと思いました。