【大城立裕】2023・1・30
2023年01月30日
二年かかりました。
大城立裕『焼け跡の高校教師』(集英社文庫)
大城さんが亡くなったときに買った文庫本でした。
いつも手の届くところに置いておきながら、
なかなか読み終えることができませんでした。
同じような描写が二回出てきます。
一年後、
彼らの卒業式での、
とくに謝恩会での興奮ぶりは忘れがたい。
ほとんどの卒業生が我を忘れた様子で、
多くが教師の胸に顔を埋(うず)めて、
それこそ泣きわめいていた。
戦争で山を逃げまわっていた日々を思うと、
それから生き延び、
解放されただけでなく、
あらためて学校に出してもらっての有難さ・・・
それを思えば、
教室さえ自分たちの手で造ったのだということが、
ひとしおの誇りと喜びを覚えたはずで、
その感慨ゆえに違いなかった。(31・32ページ)
儀式のあと、
午後に謝恩会があって、
そこで男といわず女といわず、
好きなだけ恥じらいもなく、
教師の胸に顔を埋めて泣きわめくのが、
なんの不思議もなかった。
(中略)
家庭では親が惜しみなくご馳走をつくって、
息子、娘の卒業を祝う準備をして待ち構えているのであった。
戦争というよりも戦場をくぐって、
生き延びてハイスクールまで出したことを誇りに思い、
その卒業を祝うのになんの物惜しみもないことが、
不思議ではなかった。(107ページ)
県民の四人に一人が犠牲になった沖縄戦を思うと、
さもありなんと思いました。