今週の紙上俳壇歌壇から、
老いと幼なの世界を選びました。
朝日俳壇
  黒板も机も椅子も冬休み (大阪市)行者 婉

  古日記よくもこんなに長々と (塩尻市)古厩林生

朝日歌壇
  園児らが寄って集(たか)って吾の髪に紅葉を挿して逃げて行くなり (戸田市)蜂巣厚子

毎日俳壇
  来る人なき門灯点(とも)し冬籠(ふゆごも)り  笠間市 伊藤邦夫

  十二月八日静かに暮れてゆく  真岡市 小川 充

毎日歌壇
  弟は泣きて登校厭(いと)ひけり見守る姉も道に泣き出す  神戸市 中林照明

  亡きひとの留守番電話に残る声 タダイマチョットデカケテイマス  所沢市 山本 茂

読売俳壇
  ジャムの蓋 開かぬさびしさ冬の朝  吹田市 前田尚夫

  なんということもなけれど お正月  熊谷市 松葉哲也

  里帰り焚火を知らぬ子を連れて  草津市 小川昭一

読売歌壇
  新雪に目をしばたたき幼子が またひとつ知る美しきもの  名古屋市 今井史恵

  校庭の銀杏の落葉 黄に染めて校内放送「滑らぬやうに」  前橋市 平林 始

  キューキューと成長の音たてながら眠り続ける生後二カ月  横浜市 浜 厚子

山陰文芸
  我つひに老いたりと思ふ事ありて一人こつそり ため息をつく  米子 倉井正喜

  やうやうに襁褓(むつき)の取れて七五三  奥出雲 重親利行

いずれもいずれも、
それぞれがそれぞれに、
深く深くしみました。