昨日の一日一冊は、
村上春樹『一人称単数』(文春文庫)

旬1

四阿(あずまや)の向かい側のベンチに座った老人が、
浪人生の「ぼく」に言います。
  もう一回目をつぶってな、とっくり考えるんや。
  中心がいくつもあって、
  しかも外周を持たない円のことを。
  きみの頭はな、
  むずかしいことを考えるためにある。
  わからんことをなんとかするためにある。
  へなへなと怠けてたらあかんぞ。
  今が大事なときなんや。
  脳味噌と心が固められ、
  つくられていく時期やからな。

                 (「クリーム」より)

『嵐が丘』の帯の言葉が頭に残っていたので、
この個所に感慨深いものを感じました。