昨日の一日一冊は、
有吉佐和子『紀ノ川』(新潮文庫)
卯の花

「花」は駕籠に乗り、紀ノ川を船で嫁入りします。
「お徳さん」
駕籠の中の声に、徳が傍(そば)へ寄ると、
「戸(とお)あけて頂かして」
花は小さな声でいうのである。
徳は自分の迂闊(うかつ)を悔んで、
急いで外から手伝って塗駕籠の戸に隙間(すきま)をあけた。
渡し口で豊乃がのびあがって舟を見送っていたときに気づけばよかったと、
徳は二人の主(あるじ)にすまなく思った。
(「第一章」より)

「花」が嫁いでからも、
娘の「文緒」の話になってからも、
この嫁入りの場面はいつまでも心に残りました。

今夜は「第三章」、
孫の「華子」の話を読もうと思います。