よぶこえの引き出し

【よぶこえ】第2314号「直木賞から」2018・8・14(火)

2018年08月15日

直木賞受賞作を一気に読みました。

島本理生『ファーストラブ』(文藝春秋)

 【よぶこえ】第2314号「直木賞から」2018・8・14(火)



心に引っ掛かった箇所を、
三箇所だけ選んで引用します。

  「男メンヘラ」
  つかの間、
  なにを言われたのか分からなかった。
  「ですよね。庵野先生って」
  環菜は表情を変えずに言った。
  「そんな言葉は、使うものじゃない」
  「どうして? 女ばっかり、そんなふうに言われるの不公平じゃないですか。
   男だって病んでる人はたくさんいるのに」


  一度だけ、
  保健室で相談してみたことがあった。
  まだ若い保健の先生は困惑したように、
  そうねえ、と呟いてから、
  「逃げるのをやめて、一度立ち向かってみたら?」
  とアドバイスしてきた。
  私は一応頷いたものの、
  あの言いようのないおぞましさに立ち向かうなど、
  不可能だということが伝わらなかったことに失望して、
  他人に理解してもらことをあきらめた。


  人助けしたいやつは、
  たいてい、
  同情できる人間しか助けたがらない。
  助けたくない人間まで、
  助けなきゃいけないのが、
  医者と弁護士だ。



書き写しながら、
ふと、
最近、
録画してまで見るテレビドラマを思い出しました。

『グッドドクター』と、
『透明なゆりかご』です。

舞台は、
『グッドドクター』が小児外科、
『透明なゆりかご』が産科です。

そして、
いずれも、
“発達障害”が一つの要素になっています。


まずは、
『グッドドクター』から。
  パパはお母さんといるとき、
  楽しそうに笑っているから、
  私は我慢しなければいけないって思ったの。
  
  パパに本当の気持ちを言いましょう。
  家族で隠しごとはいけません。

  やっぱり、
  パパと二人がいい。
  パパと二人で暮らす方がいい。



『透明なゆりかご』からも二箇所。
  自発呼吸のない人に、
  声は聞こえるの?

  私が勉強した範囲ですから、
  正確かどうか分かりませんが、
  脳に損傷を受けた場合、
  特に、
  低酸素脳症の場合、
  音や声が聞こえるということはないと思います。

  あんたは本当にバカね。
  そんな時は聞こえますって言っておけばいいのよ。
  でも、
  あんただけは嘘言わないって分かった。


  ねえ、
  きみが生まれてくるこの世って、
  けっこう辛いところだよ。


心が冷える場面もありますが、
最後のあたりは、
決まって、
涙がにじみます。
そして、
心が洗われます。
胸が熱くなります。  

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