よぶこえの引き出し

【よぶこえ】第2328号「とはいうものの」 2018・9・23(土)

2018年09月22日

神田茜『母のあしおと』(集英社)

著者は講談師だそうです。

「道子」さんの人生が書かれています。
普通の一代記と異なるのは、
時間を遡る形で書かれているところです。

 【よぶこえ】第2328号「とはいうものの」 2018・9・23(土)



第一章「はちみつ」
  平成26年(2014年)
  道子さん(71歳)
  語り手は夫

第二章「もち」
  平成23年(2011年)
  道子さん(68歳)
  語り手は次男

第三章「ははぎつね」
  平成8年(1996年)
  道子さん53歳
  語り手は長男の妻

第四章「クリームシチュー」
  昭和61年(1986年)
  道子さん43歳
  語り手は長男

第五章「なつのかげ」
  昭和49年(1974年)
  道子さん31歳 
  語り手は夫の従妹

第六章「おきび」
  昭和42年(1967年)
  道子さん24歳
  語り手は道子さん

第七章「まど」
  昭和28年(1953年)
  道子さん10歳
  語り手は道子さんの母親

 【よぶこえ】第2328号「とはいうものの」 2018・9・23(土)



「ご先祖さん」の話を、
最小限に引用します。

  小さいころにね、
  祖母ちゃんが教えてくれたんだ。
  人間には、
  ご先祖さんが三人ついてるんだって。

  八代さんにもきっと、
  ご先祖さんが、
  お祖父ちゃんかお祖母ちゃんかわからないけど、
  ついてくれてるんだよ。

  それでね、
  願いを叶えてあげようとして、
  いつも耳をすまして待ってるんだって。
  
  八代さんが、
  病気を治したい、
  子どもたちに会いたいって、
  お願いしたら、
  それを叶えてあげようとして、
  一生懸命働いてくれるんだ。

  だけどね、
  もう治らないかも、
  子どもに会えないかもって、
  わるいことばっかり考えてると、
  ご先祖さんは、
  それが八代さんの願いなのかなって、
  勘違いしてしまうの。
  
  それで、
  わるいことまで、
  叶えてあげようとしてしまうの。

  だから、
  わるいことは、
  絶対に考えちゃだめ。

  いいことだけ考えるの。
  そしたら、
  きっと、
  ご先祖さんが叶えてくれるから。


とは言うものの・・・。

  私ね、
  道子がいなくなったって聞いてから、
  一生懸命に、
  道子が大人になって、
  幸せになっている姿を想像したの。

  ご先祖様に、
  いい願いだけ叶えてもらおうと思って。
 
  でもね、
  いくら道子が幸せになることだけ考えようとしても、
  その倍くらい、
  道子が命を落とすことを考えてしまった。

  親は、
  どうしても、
  そんなふうに考えるものなのね。

  わるく考えるのは、  
  親だからなのよね。

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