よぶこえの引き出し

【えいえんとくちから】2019・6・13

2019年06月13日

《時計の針のようなお辞儀》
いしいしんじの、
「調律師のるみ子」さんを。
二人で、
一段落ずつ読みっこしていたら、
私の読んだところに、
  るみ子さんは腰をかがめ、
  時計の針のようなお辞儀をすると、
  道具かばんを提げて、
  玄関を出ていきます。
という一文がありました。

時計の針のようなお辞儀?
どんなお辞儀だろう?
・・・と、
思ったことが、
ぽろっと、
口をついて出てしまいました。

私は、
おぼろげに、
4時40分のような、
7時20分のような、
そんな長針と短針を思い浮かべて、
るみ子さんは深々とお辞儀をしたのだろうなと、
そんなるみ子さんを思い浮かべていました。

と、
高校生の彼が、
「ビシッとしたお辞儀じゃないですか?」
と言います。

ああ、
そういう感じ方もあるのか?!

背筋をピント伸ばして、
直線的にお辞儀する、
そんな姿を想像して、
その方が、
この場面にはいいように思いました。

満足のいく仕事をして、
客からもも、
「晴れやかな笑み」で、
その仕事ぶりを讃えられた時のるみ子さんです。

彼のいう「ビシッと」は、
けだし卓見だと思いました。

そうして思いました。

  学びというものは、
  奥が深いなあ・・・と。




《えいえん》
白井明夫『一日の言葉、一生の言葉』(草思社)に、
そんな感じの詩があったように思って、
久しぶりに開いてみました。


  えーえんとくちから
  えーえんとくちから
  永遠解く力をください
        (笹井宏之)



《とことは》
同じ本に、
和泉式部の歌が載っていました。

  とことはにあはれあはれはつくすとも心にかなふものかは命

永遠に愛してる、
いとおしい、
といくら言葉を尽くしても、
そんな心の言うことを聞いてくれるものだろうか、
命って。



《いちどでもいい》
この本に、
まどみちおの詩がありました。

  まいねんの ことだけれど
  また おもう

  いちどでも  いい
  ほめてあげられたらな・・・と

  さくらの ことばで
  さくらに そのまんかいを・・・


人間には、
手の届くこともあるけれど、
どうしても手の届かないものもあるのです。

 【えいえんとくちから】2019・6・13





ページトップへ