よぶこえの引き出し

【その箇所だけが】2019・6・18

2019年06月18日

《その箇所だけが》
いつだったか、、
どこかで、
「折々のことば」のことが話題になったとき、
  毎日毎日、
  言葉を探すのは大変だ。
・・・と、
そんなことを言った人がありました。


私も、
以前は、
そう思っていました。

でも、
Twitterに、
毎日欠かさず、
「琴線に触れた一文」をupしていて思います。

文字にしろ、
音声にしろ、
ことばというものを、
耳にしたり
目にしたりすると、
その箇所だけが、
浮き上がって見えたり、
引っ掛かって聞こえたりします。

耳や目が、
そういうふうになってしまうようです。

頭も心も、
その箇所にだけ、
ピーンと閃いてしまうようです。

 
たとえば、
昨夜、
大庭みな子が現代語訳した、
少年少女古典文学館④『枕草子』(講談社)を、
読み終えましたが、

ときに、
眠たくて、
飛ばし読みしていても、
琴線の一文のアンテナは起きていて、
その箇所だけが、
まるで太字のように目に入ってきます。

 【その箇所だけが】2019・6・18




そういう箇所を、
「琴線に触れた一文」的に、
各段から一文ずつ、
その箇所だけ引用します。


第58段「若き人、ちごどもなど」
  若い人、乳のみ児(ご)は、
  よく肥えたのがよい。


第75段「ありがたきもの」
  職場では、
  おたがいに礼をつくし、
  すきを見せず、
  最後まできちんとしていることは、
  なかなかむずかしい。


第107段「ゆくすえはるかなるもの」  
  生まれたばかりの赤ん坊をそだてるはじめるころ。


第127段「はしたなきもの」
  かわいそうな話をきかされ、
  その人が泣いているのを、
  あわれだと思ってうなずきながらも、
  こちらはいっこう涙のでないときはばつがわるい。


第159段「とくゆかしきもの」
  子どもの生まれたとき、
  男か女か早く知りたい。


第160段「心もとなきもの」
  お産の予定日をすぎたのに、
  まだ生まれない赤ちゃん。


第267段「世の中になおいと心うきものは」
  できのよい子は、
  つい目をかけたくもなるけれど、
  とくべつこれといったとりえもない子は、
  親ぐらいしかたいせつに思わず、
  ふびんである。


第276段「うれしきもの」
  物語の一巻だけ読んで、
  おもしろいと思っていたまだ読んでいない残りの巻を見つけたとき。

清少納言らしい感想が続いています。
  まあ、
  読みおえると、
  がっかりするようなこともあるけれど。


要は慣れだと思います。

言い換えるなら、
感性を磨くものは、
日常の経験の質だと思います。

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