よぶこえの引き出し

【海】2019・6・30

2019年06月30日

《高校国語と文学》
毎日新聞(6・24)の「短歌 月評」を読みました。
歌人の加藤英彦さんが、
「高校国語と文学」と題して書いておられます。

  これからの高校の国語は大きく変わろうとしている。
  小説や詩歌を扱う時間は極端に減少し、
  論理国語という実用性重視の傾向が強まるのだ。

  背景には、
  国際社会における日本の国語力の低下がある。

  豊かな心は、
  論理が育むのではない。
  行間を読み、
  心の余白を感じとる力こそ、
  実社会には必要だろう。
  
  いじめる心の闇や、
  ふと兆した狂気の逃しかたさえも、
  文学は抱きよせる海なのだ。


そんな「海」のような歌を、
今週の紙上歌壇から選びました。


《海》
朝日歌壇から。
  それはあなた元気なふりをしていれば元気になるのよ風は栗の香 (東京都)古川稚佳子

  「内定がひとつも出ない」うなだれる学生のシャツしわひとつ無し (大阪市)澤田佳代子

  詐欺電話無視しましょうの放送がりんごの摘果の畑に流れる (長野市)関 龍夫


読売歌壇
  幸せな五月でしたとしたためた手紙繰るごと散るクレマチス  平塚市 小林真希子


毎日歌壇
  これ位の心の傷は吹き飛ばせ赤白黄の芍薬(しゃくやく)の花  福知山市 衣川登代


山陰文芸
  「これはもう限界かも」とつぶやきて夫は鍬振る畝(うね)に座しては  安来 日原昌子


光も闇も、
闘い方も逃げ方も、
ひっくるめて見せてくれるのが文学です。

希望も、
恨み言も、
幸せも、
嘆きも、
ひっくるめて聞かせてくれるのが詩歌です。 

ページトップへ