よぶこえの引き出し

【滑走路】2019・7・6

2019年07月06日

《滑走路》
本屋さんで、
本を眺めてあるいて、
ふと手に取った本の、
最初のページに、
歌が一首、
ぽつんと載っていました。
 あれ?!
 この歌、
 どっかでみたなあ・・・
と思った歌があって、
あとさき考えずに買いました。

萩原慎一郎『歌集 滑走路』(角川書店)

 【滑走路】2019・7・6


  いろいろと書いてあるのだ 看護師のあなたの腕はメモ帳なのだ

朝日歌壇?
折々のことば?
あるいは記憶違い?


約300首の中から、
本の帯に引用してあったのは次の5首。

  非正規の友よ、負けるな ぼくはただ書類の整理ばかりしている

  頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく

  消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなってゆくのだ

  夜明けとはぼくにとっては残酷だ 朝になたったら下っ端だから

  われを待つひとが未来にいることを願ってともすひとりの部屋を



真似をして、
私も5首、
がんばって選びました。

  毎日の雑務の果てに思うのは「もっと勉強すればよかった」

  至福とは特に悩みのない日々のことかもしれず食後のココア

  逃げるわけにもいかなくて平日の午後六時までここにいるのだ

  東京大空襲走って生きた祖父がいてぼくのいのちがここにあるのだ

  頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく


同じ歌が一首ありました。
ふと頬の筋肉がほぐれました。


「解説」を書いた三枝昴之さんが選んだ歌は、
17首ありましたが、
其の中から、
引用された順番に5首だけ載せます。

  ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼食べる

  屋上で珈琲を飲む かろうじておれにも職がある現在は

  ここにいるあいだはここで与えられたる仕事こなしてゆくのみである

  頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく

  学生食堂A定食よ、学生にわれに夕焼け色のとんかつ

ここにも、
同じ歌が一首ありました。


荻原慎一郎という人、
私はよくは知りませんが、
萩原慎一郎という人、
歌を通して、
少しわかったような気がしました。

そして、
「滑走路」の意味も・・・。  

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