よぶこえの引き出し

【佐藤春夫全集】2019・8・30

2019年08月31日

《佐藤春夫全集》
今日は二ヶ月に一度の定期健診日でした。
内科の・・・。

診察を待っているとき、
卒業生のお母さんから声をかけられました。

「息子がやっと就職しました」
深い深い安堵の響きがありました。

ことここに至るまでの、
長く苦しいご苦労ご心労が、
じんわりと、
しかし、
ずしりと伝わりました。



前に坐った人が、
静かに静かに本を読んでおいででした。

ちらっと背表紙が見え、
『佐藤春夫全集』でした。

恥ずかしながら、
「秋刀魚の歌」と、
「犬吠埼旅情のうた」しか知りません。


それぞれ、
一部を引用します。

  ここに来て
  をみなにならひ
  君も知らぬ草をつむ
  みづからの影踏むわれは
  仰がねば
  燈台の高さを知らず
     (後略)


  あはれ
  秋風よ
  情あらば伝へてよ

  夫を失はざりし妻と
  父を失はざりし幼児(おさなご)とに伝えてよ

  ・・・男ありて
  今日の夕餉に 
  ひとり
  さんまを食ひて 
  涙をながす と
    (後略)


待ち時間に、
そんなことがあった松江赤十字病院でした。


病院を出たら、
快晴でした。

 【佐藤春夫全集】2019・8・30
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