よぶこえの引き出し

【秋はがき】2019・9・19

2019年09月19日

《秋はがき》
去年の秋、
どこかで買った秋はがき、
使いきるまでに冬がやってきて、
一年ぶりに、
引き出しの奥から引っ張り出して、
昨日から、
使い始めました。

どのはがきにも、
八木重吉の詩を添えて・・・。

 【秋はがき】2019・9・19



     虫
  虫がないてる
  いま ないておかなければ
  もうだめだというふうにないてる
  しぜんと
  涙をさそわれる


    秋
  秋
  こころがたかぶってくると
  わたしが花のそばへいって咲けといえば
  花がひらくとおもわれてくる


    本当のもの
  どうしてもわからなくなると
  さびしくてしかたなくなると
  さびしさのなかへ掌(てのひら)を入れ
  本当のものに
  そっとさわってみたくなる


    障子  
  あかるい秋がやってきた
  しずかな障子のそばへすりよって
  おとなしいこどものように
  じっとあたりのけはいをたのしんでいたい


    花
  花はなぜうつくしいか
  ひとすじの気持ちで咲いているからだ


    無題
  かんがえてみると
  きょうのいちばんよかったことは
  もさもさっとした
  けやきの
  ひょろながい梢をみていたことだった


    無題
  みんな寝ている
  妻も 桃子も 陽二も
  みんな ぐったり疲れて 寝ている
  私はそれを見て勇気が出た


出展は、
八木重吉『神を呼ぼう』(新教出版社)

 【秋はがき】2019・9・19
ページトップへ