よぶこえの引き出し

【時の俤】2019・12・24

2019年12月24日

《時の俤》
夜中に目が覚めることがあります。
午前2時なら、
たいていはそのまま寝ます。
午前4時なら、
起きてごそごそすることもあります。

午前3時、
いちばんやっかいな時間です。

昨夜というか、
今朝というか、
その午前3時に目が覚めてしまいました。


灯りをつけて、
買ったままの単行本を広げました。

小磯ふみ『時の俤(おもかげ)』(文芸社) 

【時の俤】2019・12・24



  補習と追試は翌日、
  翌々日と続き、
  十二日には二科目とも単位がとれて、
  三月十四日が卒業証書授与となった。

  証書授与は校長室で、
  教頭と学年主任の安岡が同席して行われた。

  校長が証書を読み上げ、
  みゆきに手渡してから、
  「おめでとう」と言葉を添えて握手した。
  証書は三月三日の日付となっていた。

  倫子(ともこ)は、
  みゆきと母親と三人で、
  教官室に戻った。 

  母親が、
  紫色の風呂敷包みを解き、
  「これは手作りのもので」
  と半ば恐縮したような声を添えてビニール包みを差し出した。

  お赤飯と煮物をそれぞれにパック詰めしたものだった。
  倫子は思わぬ事態に戸惑い、
  狼狽しながら受け取った。
  お赤飯はまだ温もり残っていて、
  手作りの感触と気遣いのほどが、
  掌(てのひら)を通して伝わってきて、
  胸が熱くなるのを覚えた。

今日の来客に、
そのことを話題にしたら、
「古き良き時代ですね」と、
その人は言いました。


私の感じは、
それとはちょっと違うものでしたが、
あえて反論はしませんでした。



《今朝》

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《昨日》 

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