【冬陽】2020・2・3
2020年02月03日
《冬陽》
週末は二日とも、
冬の陽を背中に浴びなら、
ゆるりゆるりと過ごしました。
ゆっくりゆっくり、
雲が流れていました。
本を三冊、
読みました。
一冊は読み終えました。
それも一気に。
奥田英朗『罪の轍』(新潮社)
この人、
ミステリーを書くの上手だなあと思います。
最後の一行まで飽きさせない。
他の二冊からも。
あさのあつこ『待ってる~橘屋草子~』(講談社)
「仕方ないさ」
束の間黙り込んだ後、
お多代が言った。
他人(ひとさま)には背中がついているんだ。
ついている以上、
背中を向けることも、
背中を見送らなくちゃいけないこともあるだろうよ。
「しかたねえよ」
後ろで幸吉が呟いた。
あの子の言うとおりだ。
おしのは、おしのだ。
おつるじゃねえ。
おつるの代わりをあの子にさせちゃならなかったんだよ。
背中が遠ざかる。
肩揚げも取れない小さな背中がまた、
行ってしまう。
肩を抱きかかえられた。
「中に入ろう。なっ」
行ってしまった。
もう帰ってこない。
仕方ないんだよ。
お多代の声が耳の奥で鳴っている。
庄野雄治篇『コーヒーと小説』(サンクチュアリ出版)所収、
江戸川乱歩「日記帳」
本の帯に、
こんな言葉が・・・。
警察小説の迫力
サスペンス小説の緊迫
群像劇の共感
二か所だけ引用します。
悪さっていうのは繋がってるんだ。
おれが盗みを働くのは、
おれのせいじゃねえ。
おれを作ったのは、
オガとオドだべ。
犯人に対する憎しみより、
もっと大きな、
畢竟(ひっきょう)の哀しみが、
ミキ子の胸を押しつぶす。