よぶこえの引き出し

【一枚】2020・3・13

2020年03月14日

《一枚》
昨夜、
探し物をしてた妻が、
文箱の中から、
思いがけない一枚を見つけました。 

20年近く前、
ホームステイの、
ホストファミリーを引き受けたときの、
報告書のようなものでした。

【一枚】2020・3・13



    偉大なもの・すてきなとき

  我が家に韓国の小学生が二人やって来ることになって
  その日のために94歳の祖母まで含めて
  アンニョンハセヨとアンニョンヒカセヨとカンサハムニダの特訓
  実際はそうした挨拶の言葉より
  まずは二人の女の子の名前を覚える努力
  〇・〇〇〇と〇〇・〇〇〇
  照れや恥じらいもなくその名を口にする頃には
  もうお別れの時

  それはそれとして
  彼女らはの日本語ができない
  我が家の者は韓国語ができない
  そうなると頼りになるのは英語
  韓国の小学校では3年生から英語を習っているという
  英語を使えば最低限のことは伝えることが出来るし
  彼女らの意志もだいたいのところは理解できる
  その程度に彼女らの英語はものになっている
  我が家の子どもたちは共通語としての英語の偉大さを
  初めてしかも現実のものとして思い知らされてしまった

  英語と同じほど
  万国共通のものがもう一つあった
  任天堂64ゲーム
  特にマリオパーティーは
  この子たちも家に持っているそうで
  大騒ぎしながら
  大笑いしながら
  ごはん以外の大部分の時間を
  ニンテンドーが力を発揮した

  「ゲーム買ってやってよかったって初めて思ったでしょ!」と
  小4の娘が自慢そうに言ったけど
  認めざるをえなかった
  英語にひけをとらないほどニンテンドーは偉大だった

  バスの窓から
  〇・〇〇〇がたどたどしい日本語で
  「さ・よ・う・な・ら」と言ったとき
  「て・が・み・だ・し・て・も・い・い・で・す・か」と言ったとき
  せつなくて
  いじらしくて
  涙が出そうになった

  娘は密かに韓国に行く計画を立てている

  すてきにかがやいた数時間だったなあと
  今思えばすべてが心にしみてせつない


娘は、
二年後、
韓国に行きました。




《一輪》
庭に見つけた一輪。  

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