よぶこえの引き出し

【その時間】2020・4・8

2020年04月08日

《その時間】
4/6の毎日新聞、
「松村由利子のうたのスケッチ蝶  こころとからだ」に、
こんな一節がありました。

    子供らの歩調に合わせて歩く道こんな時間があといくらある
                 (前田康子「キンノエノコロ」)
  大人が幼い子と歩くと、
  歩調が合わない、
  急いでいるときはもどかしくなって、
  つい抱っこしたり、
  ベビーカーに乗せたりしがちだが、
  小さな歩調に合わせて歩かなければならない時期は、
  本当に短い。
  ほうっておいても、
  子どもはどんどん大きくなり、
  あっという間に親元から走り去ってしまう。
  
  歌の作者は、
  それをよく知り、
  幼い子と過ごす時間を限りなくいとおしむのである。


講演で、
よく話題にする、
俵万智と吉本ばばなに通じるところがあって、
しんみりと心に残りました。

  たんぽぽの
  綿毛を吹いて見せてやる
  いつかおまえも飛んでゆくから
     (俵 万智『たんぽぽの日々』小学館)


  いつか手放すこの手を
  いまはしっかりつないでいよう
     (吉本ばなな『人生の旅をゆく』(NHK出版)



《たんぽぽの日々》
俵万智の『たんぽぽの日々』から数首。
  機嫌のいい母でありたし
  無農薬リンゴひとかけ摺りおろす朝

  自分の時間ほしくないかと問われれば
  自分の時間をこの子と過ごす

  あの赤い花がつつじで
  この白い花もつつじと呼べる不思議さ
  
  みかん一つに言葉こんなにあふれおり
  かわ・たね・あまい・しる・いいにおい

  のど自慢の鐘なら幾つ鳴るだろう
  叱りすぎたか甘やかしたか

  我よりも年若きベビーシッターに
  子は生き生きと抱かれており

  夢の中で夢の水などこぼしたか
  「あーあ」と言って寝返りをうつ

  「く」はワニのお口のかたち
  「へ」はへんなお山のかたち
  「し」はしっぽだね

  振り向かぬ子を見送れり
  振り向いた時に振る手を用意しながら



《今朝の庭》   

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