よぶこえの引き出し

【弁当】2020・6・22

2020年06月22日

《夏至》
昨日は夏至でした。

  夏至過ぎて吾に寝ぬ夜の長くなる  正岡子規
            (夏生一暁『日々の歳時記』PHP文庫)


夏至の空

【弁当】2020・6・22 【弁当】2020・6・22



《弁当》
  夏至今日と思ひつつ書を閉じぬ  高浜虚子
            (『合本 俳句歳時記』角川書店)

昨日、
夏至今日と思いつつも開いた本。
阿部直美『お弁当の時間がきらいだった』(岩波書店)

昨日、
半分ほど読みました。

カレーとご飯だけという、
衝撃の弁当の蓋を開けた時の、
中学一年生の著者の思い。
  顔が真っ赤になっているのが、
  自分でもわかった。
  ドックドックと、
  脈打つ音まで聞こえてくる。
  カレーごときで恥ずかしがっている自分が、
  情けなかった。
    (中略)
  前にテレビで見た、
  アフリカの、
  お腹ばっかり膨らんで、
  手足は骨と皮みたいな子どもの姿を思い浮かべた。

  アジアの、
  ゴミ山を漁(あさ)る子どもたちを思った。

  この世には、
  食べられない子どもたちがいる。
  ほら直美、
  背筋を伸ばして、
  堂々としなさいよ。


「存在感の薄い男子」の、
すてきな弁当のおかず、
アスパラのベーコン巻きや、
カイワレのハム巻きや、
焼肉のレタス巻きを見た時の著者。
  でも家では、
  笑顔の似合うお母さんが、
  可愛い息子の喜ぶ顔を想像しながら、
  くるくるっと巻いているんだろうなあ、
  と思った。

  そういう弁当だった。
  クラスメイトの、
  いつもは気づかない別の顔を見た気がした。


そして、
我が家の弁当について著者は思う。
  お弁当はふつう、
  前の晩の残り物が詰められるものだ。
     (中略)
  弁当箱の蓋を開けた瞬間、
  家族の情景が目の前に現れる。
  いつだって、
  蓋をしておきたい気持ちになった。
  母の嘆きが詰まっているみたいな弁当だった。
 
  他人に見られることが、
  何よりも嫌だった。
  我が家の湿っぽい食卓を、
  友達には知られたくなかった。
  だから、
  弁当にべっとり張り付いた黒い闇を、
  プチトマトの赤やブロッコリーの緑で、
  とり繕って欲しかった。

  弁当というものは、
  残酷だ。
  中学一年生で、
  私はそう思った。

  自分が背負っている家族を、
  小さな箱と向き合う度に、
  いつも突きつけられる。

  隠したくても、
  見る人が見ればわかってしまうかもしれない。
  どうかわかりませんように、
  気づかれませんように。
  
  それが、
  中学生の私の「おべんとうの時間」だった。  

【弁当】2020・6・22



高校生の私も、
友だちの、
レタスを敷いて、
その上に並べられた、
色鮮やかな弁当が羨ましかった。

出がけに、
弁当の蓋を開けて、
そのまま机の引き出しにしまって、
持って行かないことも、
よくあった。

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