よぶこえの引き出し

【ちちよ】2020・7・16

2020年07月16日

《ちちよ》
雨上がりの庭に蓑虫。

蓑虫が一つ。
風に揺れて蓑虫が一つ。

【ちちよ】2020・7・16



高校の教科書に載っている「枕草子」の中で、
蓑虫(みのむし)の段は、
もっとも切ない段です。

  蓑虫、
  いとあはれなり。
  鬼の生みければ、
  親に似て、
  これもおそろしき心ちぞあらとて、
  親のあしき衣(きぬ)をひき着せて、
  「いま秋風吹かをりぞ来。待てよ」
  と言ひて、
  逃げていにけるも知らず、
  風の音聞き知りて、
  八月ばかりになれば、
  「ちちよ、ちちよ」と、
  はかなげに鳴く。
  いみじくあはれなり。
       (第50段「虫は」より)

  蓑虫は、
  たいへんしみじみとした感じをおぼえさせる。
  鬼が生んだのだったので、
  親に似て、
  これも恐ろしい気持を持っているだろう
  というので、
  親が粗末な着物を引き着せて、
    もうすぐ、秋風が吹く吹く時になったら
    その時に迎えに来よう
    待っておいでよ。
  と言って、
  逃げて行ったのだたったのも知らないで、
  秋風の音を聞き知って、
  「ちちよ、ちちよ」と、
  頼りなさそうに鳴く。
  たいへんにしみじみとした感じだ。
         (日本古典文学全集⑪『枕草子』小学館)


ここには、
助動詞「む」の意味のうち、
推量、
仮定、
意志、
・・・と、
三つも使われていて、
「む」の説明には都合のいい箇所です。

そういうことの方に、
より重きを置いて授業をしていたなあと、
今から考えれば、
もっと別の授業ができたであろうのになあと、
そんなことを思いました。

そうして、
親と子のことを、
ちょっと書いてみようと思いました。
近いうちに・・・。

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